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引き取った彼
寒空が広がり、顔に痛みすら感じる様な寒さを感じる街並みは子供達の楽しそうな声がイルミネーションの様に彩る。今日はクリスマス建物からは、それぞれ温かなオニオンスープの香りや芳ばしいチキンの香りが漂う。 そんな祝福の様な雰囲気の中、僕の後ろを怯えながら歩く少年は雪のように白い髪を無造作に伸ばし、髪から覗く真っ赤な目は僕を虚ろに映す。
「僕の事が怖いかい?」
僕は立ち止まり、明るめな声でそう投げかけると彼は肩を揺らし震えながら首を横に振る。彼が僕に怯えるのも無理もない。彼の居た施設は黒い噂が絶えず囁かれているのだ。
表向きはどこにでもある製薬会社で、慈善事業として行き場の無い子供達を自立するまで育て優秀な子は製薬会社にも就職できるかもしれないといった夢のある話を掲げている。
だが実際は、人を攫ったり引き取ったりしては、薬品や人間を甦らせる人体実験や呪いをかける為に人間自体を呪物にする人間蠱毒を行っているという。
そんな場所で引き取った彼は尋常じゃない怯え方や傷跡。彼の纏う雰囲気が、嘘では無いという事を物語っている。
ですが、そんな事は僕には関係ない事です。
僕は今日、あの場所で処分される予定だった彼を引き取りました。引き取った理由は単純明快で僕の復讐の肩代わりをさせる為、ただそれだけです。勿論、本人にも説明をした上で引き取っていますが、未だ一言も会話ができていません。
「君、喋れるの〜?」
「……」
「う〜ん、困ったなぁ〜」
僕は自分を偽りながら出来るだけ彼の不安が募らないように明るく語りかける。ですが、彼から返って来る返事は全て首の縦横だけ。
さすがに僕も、どう接するべきか分からないのもありますが用が済めば、この子は用済みで関わる必要も無くなるので気にする程では無い。そう考え帰宅まで沈黙の時間が流れていきました。
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