慰めてあげる

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「……果穂! ほんっ……とうにごめん!」  翌週の月曜日。社員食堂での昼食時に、改めて果穂に謝罪する。 「謝らないでよ! 全然全然。むしろさ、変な男に騙されなくてよかったって、皆美子に感謝してた」  果穂はあっけらかんと大笑いしてくれるので救われる。  やっぱり彼女は私の一番の理解者であることに、心から感謝した。 「それよりさ、ビッグニュース」  果穂はニヤリと笑い、私の耳元で囁く。 「……織原さん、金子さんと別れたって」  そんな衝撃の言葉に目を見開いた。 「総務部の情報通の子から聞いちゃったんだよね。金子さん、大手電機メーカーの御曹司と結婚決まったらしいよ」 「そんな……」 『たった今フリーになりました』  じゃあ、あの言葉は冗談でも幻聴でもなくて、真実?  金子さん、織原さんではなく別の男性と結婚するなんて。 「もしかして政略結婚? 今もそんなことがあるなんて」  だとしたら切ない。愛し合っている二人が引き離されてしまうなんて。 「それがさ、そうでもないっぽい」  果穂はどこか気まずそうに言った。 「別の子がさ、見たらしいのよ。金子さんが織原さんとは別のイケメンと手を繋いで歩いてたとこ。かなりイチャイチャしてたらしい」  「……………」  目の前が一瞬にして真っ暗になった。  それって二股じゃない。  そんなのってあんまりだ。  織原さんは結婚を考えるくらい、金子さんのことを大切に愛していたに違いないのに。 「ってことで、美子にも絶好のチャンス到来!?……って美子?」  気づいたら涙が止めどなく溢れ出ていた。 「……美子が泣いてるの初めて見た」  私も泣くのは久しぶりでびっくりしている。  どんなに理不尽な状況におかれても、今まで涙なんて出てこなかったのに。  だけど、織原さんの気持ちを考えると胸が痛くて仕方ない。  心から愛していた人に裏切られるなんて、どれほど絶望的なことだろう。  苦しくて、彼の為に何も役に立たない自分が悲しかった。 「ホントに好きなんだね」  果穂の感嘆のような呟きが響いて、私も思い知る。  本当に、織原さんのことが好きなんだ。  自分のことよりも夢中になって苦しくなるくらい、彼のことが。
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