男手ひとつで

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 妻が亡くなってすぐは、俺も里沙もなかなか現実を受け入れることができなかった。  しかし、時薬というのは効くものである。  俺も里沙も、ついには現実を受け入れ、二人で共に成長しながらここまで来ることができた。  親戚からは、 「男手ひとつで娘さんを育てるなんて大変でしょ」 と、何度も心配された。  実際、大変ではあった。  親戚の中には、私が引き取ろうか、などと言ってくる人もいたが、里沙は俺の子供。誰にも渡したくない。  親切心で言ってくれているのは分かるが、俺に育児能力がないかのような扱いに腹が立った。  妻はいなくても、里沙は俺が育てる。  だって、俺は「親」なのだから。  里沙が小学校に入学する時には、給食袋を縫い上げたものだ。エプロンやランチマットなどを入れるための、いわゆる巾着みたいな袋だ。  もっとかわいい袋がよかった、なんて言われもしたけれど、なんだかんだで卒業まで使ってくれた。
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