男手ひとつで

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 一人で娘を育てていく。  その決意は固いつもりでいたが、親戚たちからは私が無理しているように見えたらしい。  いろいろな助けを提案されたが、俺は「親」としてのプライドで、それを頑なに断ってきた。  しかし、精神論で乗り切るのには限界があった。  ある日、俺は倒れてしまい、里沙に多大なる迷惑をかけてしまったのである。  親戚や俺の親、そして亡き妻の親たちは手を差し伸べてくれた。  親戚たちは交代で炊事や掃除、洗濯に来てくれた。  里沙の面倒も見てくれた。  心苦しくも思ったが、正直、地獄で仏を見たようだった。  人に頼るのは負けた気がする。これまでの俺は、そう思っていた。  しかし、助けてもらったことで、自分が一人で意固地になっていたことに気付かされたのだった。  人に頼ることは、必ずしも迷惑なことではない。  人には助けてあげたいという、根本的な愛情というようなものが備わっているのであろう。  親戚たちは、俺や里沙の役に立てたことを嬉しく思うと言ってくれたのだった。  何でも一人で頑張るのではなく、時には人の助けも借り、ギブアンドテイクで生きていくことの大切さを、育児から学ばせてもらった気がした。
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