男手ひとつで

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 俺は母親ではないし、そもそも母親になることはできない。  しかしながら、母親に勝ろうとそればかり意識していたのが失敗だったのだと、今にしてみればそう思える。  父親にはできないこともあるが、父親だからこそできることもあるはず。  そちらに目を向けるべきだったのだ。  里沙の前ではスーパーマンでありたかったのも本音だった。  しかし、時には弱みも見せたり、人に頼ったりする、そんな俺のことを里沙は分かってくれていたようだった。  完璧な人間なんて存在しないのと同じように、完璧な親なんてものもまた、存在しない。  ただし、「成長」することはできる。  里沙を育てながら、俺は父親になるよう里沙に育てられていたのだ。  親は子供を育て、子供は親を育てる。実際、そういうものなのかもしれない。
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