残 滓

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鼓動が高鳴る。「あら、久しぶりじゃない!元気にしてた?」「もうゴチャゴチャしちゃってるけど、何も遠慮しなくていいのよ」「どうせたいていのモノはゴミにだしちゃうんだから」 勝手に1人で喋る伯母とは裏腹に、なかなか言葉が出てこない。 「あ…あの…おばさんはどうして…」 お邪魔してますなんていう挨拶とか、昨日帰ったはずなのにいつから居たのかとか、そんなことよりも絞り出すように出てきた言葉がコレだった。冷汗が止まらない。 「あ~。ちょっと大事なもの忘れちゃって、飛んで帰ってきたの」 「今から寒くなるから、こたつは持っていったんだけど、コレ忘れちゃって」 そういった伯母の手には、どこかで見たような、赤と黒の縞模様の電気コードがぶらぶらしている。「もぅ、わたしってドジね。これが無いと眠れないのよ」 フフッと笑う伯母を見ることもなく、早々に飛び出した。獣のような香りが鼻を衝く。アレ?そういえばペットの犬も居たような気がしたが、いつの間にかいなくなっていたな…。どうなったんだ?もう、考えが纏まらない。 伯母の手が肩にかかるか、かからないかくらいで「キャン!」と一声、犬の鳴き声がした。伸ばした手が止まる。呼び止めただけなのか、亡き者にしようとしたのかはわからないが、伯母が追ってくることはなかったし、それ以降伯母を見かけることも無かった。
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