残 滓

4/7
前へ
/7ページ
次へ
それは音こそないが、笑いながら食事をとるシーンや、一緒にTVを見ているシーン、風呂あがりでアイスを口にくわえながら髪を乾かすシーン、どれも平和でほのぼのとした明るい生活。 その陰で織りなされていた曾祖母への迫害。特に認知症や他病気を患っているわけでもない、至って健康な一人暮らしをしていたのだが、万が一のことを考えた同居という選択がむしろ、軋轢を生むきっかけになったのだろう。 食べるものも、着るものも、風呂やトイレに至るまで、明らかな差別をつけられているが、それに逆らえない苦悩や悲嘆、怒り、憎しみ…負の感情が募り、凝り固まっていく。 辺りは急に赤く染まり、息苦しさを覚えたしばらく後、不意に辺りが真っ暗になる。まともに呼吸ができるようになると、薄っすらと上から見下ろすような映像に変わる。首を絞められ、変わり果てた曾祖母の横に、赤と黒の縞模様のロープを持つ手が見えるが、顔は見えない。それはまるで、監視カメラで殺人の現場をとらえたかのようなシーンだが、果てたはずの曾祖母の遺体が、見えるはずのないその瞳が、こちらを凝視している。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加