残 滓

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我に返る。変わらず煌々と日の当たる部屋だ。だが、何かを訴えかけるような映像の後の空気は異様に重い。親戚の曾祖母は急に体調が悪くなり亡くなったことは聞いていたが、ひっそりと家族葬で済ませたらしい。今のが事実だとすると、この家で起きたことは、まさか皆が共有しているのではないだろうか? 人付き合いも良く、毎度お邪魔する私にも優しく接してくれたし、大人になってからも、地域の行事や、自分が就職する際にもお世話になった。そんなことはありえない。そう思えば思う程、自分に向けられていた優しさが逆に恐ろしくなっていく。 何分その場にいたのか分からない。時間を知るすべは自分の携帯だけだったが、画面を覗き、黒い画面に反射した背後の人影。「ヒッ!」小さく悲鳴を上げると、いつから居たのか、それは幽霊でも何でもなく、家主である親戚の伯母さんだった。
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