あのバスにのりたい

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 幼稚園、とはどこなの。  あたしは朝、窓から亜紀ちゃんちを見ていた。亜紀ちゃんは、亜紀ちゃんママとパパと三人で、何か人が集まっている角のとこへ向かう。  すると、パンダさんの絵がかいてあるピンクのバスがやってきた。亜紀ちゃんは、他の子たちにつづいて、そのバスにのりこんだ。窓から、外にのこった亜紀ちゃんママとパパに手をふる。  あれが、幼稚園というところへ行くバスかしら?  次の日、あたしはその時間その場所に、亜紀ちゃんに会いに行った。 「あたしも行く」  子どもたちが並んでいる列の後ろに、あたしも並んだ。こうして順番を待っていれば、あたしも――。 「ごめんね。君は乗せられないんだ」  運転手さんは笑ってはくれたけど、そう言ってあたしに手のひらを向けた。 「どうして?」 「君はこの幼稚園の子じゃないだろう?」  亜紀ちゃんが、奥の席から心配そうに見ていた。でも、「沙っちゃんをのせてあげて」とは言ってくれない。  目の前で、ぷしゅーっとドアがしまった。  バスは行ってしまった。誰もいなくなったバス停は、ちょっとさむかった。
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