あのバスにのりたい

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「そうね、沙千はまだニセモノなの。だからバスには乗れないのよ」  亜紀ちゃんママに送ってもらって、うちのママの顔を見たら、ドバドバッと涙がこぼれちゃった。そしたらママがぎゅっとしてくれてそう言った。  いつもは万梨がいるから、あたしはお姉ちゃんだから、ママにくっついたりしないんだけど。万梨はまだねてるみたいで、だからあたしはしゃくりあげて止まらなくなっちゃった。 「何で……何でニセモノってわかっちゃうの? あたしいっしょうけんめいおんなじにしたのに」 「う~ん、そうね。じゃあ、ママが本物になれる魔法をかけてあげようか?」 「えっ」 「それには沙千も協力してくれないとダメなのよ?」 「うん!」  あたしの涙は急にかわいた。そのほっぺをふきながら、ママは言った。 「じゃあね。もういくつ寝るとお正月、みたいに、あと300……と22回数えられるかな?」 「え……それ10よりいっぱい?」 「そうねえ」  ママは大きな袋をじゃらじゃら言わせながら持ってきた。知ってる。そこにはおはじきがいっぱい入ってるの。ママはその袋のよこに、ダンボールの箱をおいた。ふたをしめてテープでとめて、上に貯金箱みたいに、ほそい口をあけた。そして、おはじきをひとつ、そこへストン。 「一日一個。こうやってこっちの箱へ移して、この袋の中が全部なくなったら魔法完成よ」  あたしはびっくりした。 「こんなにたくさんのを?」 「魔法っていうのはね、そう簡単には効かないものなのよ」  そうか。  ようし。あたし、がんばる。
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