3 背中

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3 背中

翌日の土曜日、昼近くに目を覚ました。 どうやって帰ったのかわからないが、メイクを落とさず、スーツを脱ぎ散らかした状態で布団に潜り込んでいた。 玄関の鍵もドアチェーンもきちんとかけていたことにほっとする。 シャワーを浴びて、部屋の掃除をすることにした。 ようは断捨離だ。 彰のTシャツ。 私服が何枚か。 パジャマ代わりのジャージ。 ワイシャツ。 ネクタイ。 パンツ。 靴下。 シェービングクリーム。 ヘアワックス。 歯ブラシ。 剃刀。 マグカップ。 お茶碗と箸。 本。 雑誌。 茶碗類以外はすべて彰の荷物を置いておくために用意した3段ボックスの引き出しに入れていたので、あっという間に断捨離は終わった。とはいえ、他の人のものを勝手に捨てるわけにはいかない。 歯ブラシと剃刀は捨てるとして、他のものは段ボールに詰めた。 ガムテープで封をして玄関の隅に置いたら、下駄箱にあるスニーカーを思い出して、それも段ボール箱の中にぶち込んだ。 汗をかいたので再びシャワーをあびる。 見た目は変わらないのに、心なしかすっきりとした部屋でスマホをひらく。 前野君からLINEがきていた。
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