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ピコン。
『到着』
『ねえ、コートってどんなのがいいかな?』
『暖かいの』
暖かさ重視か。
まあ、暑ければ脱げばいいか。
ショート丈のグレーのダウンコート。ストール。キャスケット。斜めかけのポシェット。
髪型は緩く編んで一つに結んだ。
ロングブーツとスニーカーでまた悩み、ブーツがピンヒールだったから、足首まである定番のスニーカーを選んだ。
多分動きやすい方がいいのかなと思ったからだ。
もう、部屋まで呼んでどれがいいか選んで欲しいくらいだ。
ぶつぶつ言いながらも、わくわくしている自分がいた。
*
エントランスの自動ドアを開けてゆっくり近づくと、前野君が私に気付く。
すがっていた壁から離れながら、スマホをダウンコートの内ポケットにしまった。
「お待たせ」
「俺の方こそ、急に誘ってすみません。予定、大丈夫でしたか?」
互いに近寄り、隣に立つ。
「うん。片付けしてただけだから」
「ああ、年末の大掃除?」
「うん。そんなかんじ」
彰の荷物の断捨離とか説明したくなくて、話を終わらせた。
「ねぇ、動きやすくて暖かい格好って、これでよかった?」
二、三歩さがって、両腕をばっと広げ、服装を見せた。
「凄くいいです」
前野くんが私をきゅっと抱き締めた。
「え?!」
びっくりして固まる。
「かわいい」
すぐに体を離し、にこっと微笑まれた。
じゃ、行きましょうかと、自然に手を繋がれ、外に出た。
一瞬の出来事だったとはいえ、前野君の距離感の近さに動揺する。
先週ツリーの前で会うまではこんな感じじゃなかった。
用事があるときしか話さなかったのに、彼の変化に驚いた。
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