3 背中

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体に感じる振動、傾き。 スピード。 流れていく景色。 風。 ゴンゴンとぶつかるヘルメット。 前野君のしっかりとした体つき。 うわー--------! 初めてのバイクの後部座席。 どきどきが止まらない。 しばらく走ってバイクは止まった。 郊外にあるお蕎麦屋さんの駐車場だった。 バイクに乗っていたのは30分弱くらいだったらしいけど、すごく長くも、一瞬だったようにも感じる。 「楽しかった!」 前野くんの言われるまま、肩に手を当て立ち上がってからバイクをおりる。ヘルメットを脱いですぐ、興奮して言った。 「あはは。よかったー」 外したヘルメットと手袋を渡すと、キャスケットを被せて、ストールを巻いてくれた。 「寒くなかった?」 「うん。大丈夫」 「本当だ、手が温かい」 そのまま手を繋がれ、お蕎麦屋さんの扉をくぐった。 「ここ、ツーリングの途中で寄ることがあるんだ」 「前野君はよくバイクに乗るの?」 「たまにかな。学生の時はみんなと毎週どこかに行ってた」 前野君おすすめのお蕎麦はとてもおいしかった。 お腹が空いていたせいか、二人とも無言でそばをすすった。    * 食後のお茶を飲みながらやっと会話を始めた。 「バイクの運転したことってある?」 「車の免許取るときに原付乗った」 「あれは乗ったのに入るの?」 「入るっしょ。楽しかったし」 「はは。楽しい程乗らせてもらったんだ?」 「うん。教習所をひたすら時間が来るまでぐるぐると。10人くらいで一列に並んで走ったような気がする。あと、わざとバイクを倒して起こす練習とか」 優しい雰囲気のお蕎麦屋さんの空間はゆっくりしていて、話が弾んだ。 ご主人自身もバイクが趣味らしく、ツーリング先でとった写真が壁に飾られていた。 ここで休憩して再びバイクに乗るんだそうだ。 「もう3,40分くらい走ったところにおすすめの場所があるんだけど、行ってもいい?」 「うん。いいよ。どんなとこ?」 「気象台。これから行けば、日が沈むの見れるよ」 「うわっ!行ってみたい」
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