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体に感じる振動、傾き。
スピード。
流れていく景色。
風。
ゴンゴンとぶつかるヘルメット。
前野君のしっかりとした体つき。
うわー--------!
初めてのバイクの後部座席。
どきどきが止まらない。
しばらく走ってバイクは止まった。
郊外にあるお蕎麦屋さんの駐車場だった。
バイクに乗っていたのは30分弱くらいだったらしいけど、すごく長くも、一瞬だったようにも感じる。
「楽しかった!」
前野くんの言われるまま、肩に手を当て立ち上がってからバイクをおりる。ヘルメットを脱いですぐ、興奮して言った。
「あはは。よかったー」
外したヘルメットと手袋を渡すと、キャスケットを被せて、ストールを巻いてくれた。
「寒くなかった?」
「うん。大丈夫」
「本当だ、手が温かい」
そのまま手を繋がれ、お蕎麦屋さんの扉をくぐった。
「ここ、ツーリングの途中で寄ることがあるんだ」
「前野君はよくバイクに乗るの?」
「たまにかな。学生の時はみんなと毎週どこかに行ってた」
前野君おすすめのお蕎麦はとてもおいしかった。
お腹が空いていたせいか、二人とも無言でそばをすすった。
*
食後のお茶を飲みながらやっと会話を始めた。
「バイクの運転したことってある?」
「車の免許取るときに原付乗った」
「あれは乗ったのに入るの?」
「入るっしょ。楽しかったし」
「はは。楽しい程乗らせてもらったんだ?」
「うん。教習所をひたすら時間が来るまでぐるぐると。10人くらいで一列に並んで走ったような気がする。あと、わざとバイクを倒して起こす練習とか」
優しい雰囲気のお蕎麦屋さんの空間はゆっくりしていて、話が弾んだ。
ご主人自身もバイクが趣味らしく、ツーリング先でとった写真が壁に飾られていた。
ここで休憩して再びバイクに乗るんだそうだ。
「もう3,40分くらい走ったところにおすすめの場所があるんだけど、行ってもいい?」
「うん。いいよ。どんなとこ?」
「気象台。これから行けば、日が沈むの見れるよ」
「うわっ!行ってみたい」
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