5 クリスマスツリー

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5 クリスマスツリー

【side 前野晴久】 遅くなった…。 俺は仕事帰りに智花と待ち合わせをしていた。 終業間際に掛かってきた電話が長引いて、待ち合わせの時間は過ぎていた。 『了解』  『その辺のお店を見てるから大丈夫ー』 『着くころ連絡して』  『急がなくていいからがんばって!』  小走りで待ち合わせ場所に急ぐ。 どこのあたりを見てるんだろう。 キョロキョロと見渡しながらポケットからスマホを取り出…す前に、智花の姿を見つける。 ショーウィンドーを眺める智花に近付く。 智花は嬉しそうにじっとガラスの中を覗きこんでいた。 「何してるの?」 「あ。晴久。お疲れー」 「遅くなってごめんね」 「大丈夫よ。それより仕事大丈夫だったの?」 「うん。解決した」 「よかった」 微笑む智花に癒される。 「何見てたの?」 智花が見ていたガラスの中を見ると、そこにはがバッグが並べられていた。 クリスマスだもんな。 智花はバッグが欲しいのか。 と思っていると、 「これ」 「赤いの?」 「ううん。その横のクリスマスツリー」 「?」 智花の指さす先は商品のバッグではなく、その横に置かれた飾りだった。 それは小さなガラス細工のクリスマスツリーだった。 ライトに当たってキラキラと煌めいていた。 「小さくてかわいくない?」 「うん。可愛い」 「これも売ってるのかな?」 「うーん。違うでしょ?」 そう言いながらもショップに入って店員さんに尋ねた。 残念ながら、やはり売り物ではないらしい。 「ま、残念だけど仕方ないよね。 ね、お腹空いた!どこ行く?」 「そうだなー」 2人で手を繋いで歩き始めた。 そして絶対に探してプレゼントしようと思った。 だって、智花が泣いていた大きなクリスマスツリーじゃなくて、かわいらしい小さなクリスマスツリーに心惹かれてくれたのだから。 【side 前野晴久 終】    *** 数日後。 「倖さん」 晴久に営業室で呼ばれた。 にこにこと嬉しそうな晴久から、手のひらサイズの箱を手渡された。 「なに?」 「プレゼント」 まさかのクリスマスプレゼントなのか? 「…クリスマスまでまだ2週間もあるけど?」 「クリスマスまでを楽しむためのアイテムだから、少しでも早く渡したくて」 「そうなんだ。ありがとう」 「家で開けて」 「分かった。楽しみ」    *   帰宅後、包みを開ける。 「あ・・・・」 中に入っていたのは小さくてキラキラしたガラス細工のクリスマスツリーだった。 「きれい……かわいい…」 キラキラだぁ‥‥‥。    END 最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
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