入浴移譲

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入浴移譲

世の中にはお風呂が嫌いな人がいる。 ある汚ならしい男が私に、 「自分の代わりにお風呂に入って欲しい」と言う。 不思議に想い訊ねると、 男は一枚のカードを出して、 「このカードは他人に入浴を委譲する事ができ、 自分が入浴した同じ効果が得られる」と言うのだ 「ただし、此処の銭湯でないと効果がなく この銭湯に入って欲しい」 と、カードを差し出して懇願してくる。 カードには[入浴委譲券]と書いてあり …そんな馬鹿な事があるのか?… と、想いつつも男からの入浴委譲を引き受ける。 ここの入浴料金は、かなりの高額であるが、 人助けと想い快く引き受けてしまう。 入浴を終え外に出てみると、私の目に飛び込んできたのは、 さっぱりと爽やかに変化した男だった。 「本当にお風呂に入ったみたいだ」 と、男は喜こびを隠せ無い。 それから何日もの間、私は入浴委譲を受け入れた。 高額の料金を支払いながら私は、入浴し続けた。 後に判明したのだが、この男はこの銭湯に 雇われた詐欺師だった。 入浴を移譲された異常な男に騙された私。 本当に情けない。
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