ようこそ我が家へ

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「なぁ、一か月くらい前、この家の近くで山火事とかなかった? ショート動画見てたら上がっててさ」  妻の淹れたコーヒーを飲みながら、Kはリビングのソファでずっと喋っている。  窓の外は小春日和。とても穏やかな午後だ。 「さあ。場所が違うんじゃない? それかフェイク動画」 「ああ、そうかもな。ニュースにもならなかったし。俺、ああいうのにすぐ騙されるんだ」  Kは頭を掻きながら笑って続ける。「最近暇さえあればずっとショート動画観ててさ。観出したら止まらないよな、あれ」 「へぇ。そんなもんかね」  Kは僕の高校時代の友人だ。  クラスは一緒だったが、いつもつるんでいたというわけではなかったし、卒業して23年、一度も会っていない。それが今日、「近くに来たついでなんだ」と言って、突然我が家を訪ねてきた。  山奥の辺鄙な一軒家であるにもかかわらず。  それにしても、こんなによくしゃべる男だっただろうか。何が目的かもわからない世間話を、30分くらい続けている。  妻はと言えば、久々の来客に興味深々らしい。飼い始めて2か月のレオをケージに入れたあとは、ずっとKの横で微笑んでいる。  まあ、これはこれで、よかったのかもしれない。
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