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「なあK、うちは投資とかに興味ないんだ。悪いが、今日のところは帰ってもらえないか」
Kを救うための言葉だったのに。
「何言ってるんだよ。こんな機会逃したら、お前一生後悔するぞ」
「いや、ほんと、間に合ってるんで」
「はぁ? なんだよそれ。まるで俺が押し売りしに来たみたいな言い草じゃないか。友達だと思って、こんな山の中までわざわざいい話持って来てやったのに!」
助け舟を見事に蹴飛ばしてきた。
「みんな言ってるぞ、お前のこと。そこそこいい会社に勤めてたのに、ちょっとパワハラされたくらいですぐ辞めて、嫁さん道連れにこんな山奥に引きこもって。猿じゃないんだからさ。いや、猿だって群れの中でちゃんと暮らすぞ。そりゃそんなヘタレじゃ子供も作れないよな、とてもじゃないが育てられない。奥さんも気の毒に」
最悪だ。
もう救えない。
妻の口角が片方だけゆっくり上がった。
その感情を読み取ったかのようにレオの尾が揺れる。
白くて細い触手がスルスルと後方から伸びてきて、音もなくKの首に巻き付いていく。
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