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「花言葉? そんなのわかる訳ないじゃないか?」
誠司は苛立ち答えた。
「そうよね……誠司さんはそんなこと気にするタイプじゃないものね。でも昔はこんなことさえ考えてくれた……」
「もう、昔とは違うんだよ……」
真っ直ぐ聖は誠司を見つめたが誠司は目を逸らした。
「花言葉は『逆境の中の希望』よ……」
「純粋無垢な女じゃあるまいし……そんな言葉に縛られてどうするんだよ?」
「でもあなたが我に返って私の元へ戻ってくるって希望を持ちたかった……」
テーブルを叩き半ば発狂したように声を荒げた。
「ごめんな。その希望には添えないんだよ」
「そうよね……だからもうひとつの花言葉の意味、『慰め』にいつかしら変わった……私は一人この部屋でこのスノードロップに慰められた。どんなに辛くても誠司さんが相手にしてくれないから……」
「寂しいな……聖……。済まない。まだ仕事が残ってる。会社に戻るから判……頼むな」
誠司は立ち上がり躊躇いもなく背を向けた。
「待って……誠司さん……。もうひとつ花言葉あるの……なんだと思う?」
誠司は黙ったまま答えず煩わしさから逃げるように出ていこうとする。
「それはね……」
聖はスノードロップの鉢を抱えたまま誠司の背後に立った。
「それは『あなたの死を望みます』……よっ……」
その言葉を聞いた誠司は振り向こうとする。しかし、その前にスノードロップの鉢を誠司の頭めがけて振り下ろした。
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