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初めてのデート
「水族館……水族館……二人で水族館……」
心の中でモゴモゴ言いながら麻央子は家路についたが、なんとはなしに落ち着かない。こういうときはどんな風にすればいいのだろうか。大学は夏休みだから、気心の知れた人にさっと相談できるわけでもないし、だとしたら。
「やっぱり小百合ちゃんかなあ」
親友となったバイト先の小百合が、一番に頭に浮かぶ。同じバイトの健から誘われたというのに、相談してもいいものだろうか。
「でも……小百合ちゃんしかいないしな」
ひとまずは家に帰り着く。自分の部屋に入ってから、麻央子は小百合にメッセージを入れた。「デートに誘われたんだけど、何をどうすればいいのかわからないんだ」と、正直に。
小百合からはすぐに返信があった。
『なに! デート!? 誰からー!!』
「えーとね、内緒にしてね。健くんから」
『マジか!! 健、やっぱりまおちゃんのこと狙ってたね! そうだと思った』
「れいじさんには黙ってて〜」
『了解了解。どこに行くのかわかってるの?』
「水族館でもどうか、みたいなこと言ってる」
『真夏に水族館、ありがちなセレクトだなぁ笑』
「そういうもの? 正直、男の子からデートに誘われたの初めてで。どうすればいいのか全然わからないの」
『まおちゃん、ずーっと女子校だもんね、うん。そんなに難しく考えることないよ、好きな服でも着て、ちょっとお化粧がんばって、行きたいところ行けばいいんだよー!』
「健くんは水族館って言ってるけど?」
『まおちゃんは水族館でオッケー?』
「うん、水族館は好き」
『じゃあそこで楽しめばいいの! 心配することないのよ、殺されるわけじゃないんだから。笑』
小百合は自分の初めてのデートがどんな風だったかを教えてくれたり、真夏のデートは汗や化粧に気をつけろなどと教えてくれたりした。服装は綿の服がベストだ、とも。
『綿よ! コットンよ! 化繊NGよ! でないとデートなのに大汗かいて死ぬからね!!』
「わ、わかった、綿にしとく」
麻央子は内心どの服にしようか悩んでいたし、新しく買うのはお金がかかるし、しばらく思案ばかりの日々を過ごした。
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