アルバイト、しよう

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アルバイト、しよう

 大学の授業が午後からの平日、『朝の浜辺』がオープンしたばかりの朝十時頃。  客がいないのを見計らって、麻央子は店へ入ってみた。アルバイトのかっこいい男の子は、今日はいないらしい。 「いらっしゃいませ」  細いようながっしりしたような不思議な体格の男性が、厨房から出てきた。真っ白の服を着て、真っ白のエプロンをつけている。この人がケーキを作っている人なのかな。メガネをかけていて、にっこり笑うととても優しそうだった。 「あの、アルバイト募集のポスターを見て……」 「ああ! アルバイトしてくれるの? 嬉しいな、ちょっと人手不足でね、来てくれると助かるよ」  澄み切った美しい声だ。麻央子は直感でそう思った。 「私でもできるでしょうか……アルバイトってものをしたことがなくて」 「大丈夫、できるよ。ちゃんと教えるから。そんなに怖がらないでね」 「ありがとうございます、ぜひ雇ってください。がんばります」  店主はにこにこして頷いた。本当に優しそうで、誠実そうな人。この人が上司だったら、安心してアルバイトの仕事ができそうだと感じた。 「そうだな、今お客様いないから……ちょっとこっちへ来てくれる?」  レジの内側に入るように言われ、麻央子はおずおずと入ってみた。ケーキが収まる、大きな扉のついたショーケース、いつもはお客としてしか利用しないレジ、その奥に厨房があった。  厨房の中はそれほど広くなくて、食器の入った戸棚や食器洗いのための流し、ケーキを入れておく冷蔵庫、他にもケーキを作るための道具など、いろいろなものがあった。
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