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プロローグ
『朝の浜辺』
その可愛らしい看板とピカピカの窓の奥には、美味しそうなケーキがたくさん並んでいた。
麻央子は窓越しに目を見開いて、ショーケースの中を覗き込む。
いちごのショートケーキ、チョコレートケーキ、ふわふわチーズケーキ、ブルーベリーのパイ……
遠目で見ると、フランス語だか何語だかわからない名前ではなく、日本語で書かれたケーキの名前。お値段もそれほど高くない。
ショーケースの外には焼き菓子。クッキーやマドレーヌ、バターたっぷりフィナンシェ。
焼き菓子はターコイズブルーの箱に入れて陳列されている。
なんて可愛いケーキ屋さんだろう。
きっととても優しい人が作っているケーキに違いない。
厨房の奥から大学生くらいの男の子が出てきた。
彼はすっきりとした顔立ちの、背の高い若者だった。
かっこいい……アルバイトの人かな……
目が合った。にこりと笑顔を向けられた。麻央子はどきりとして、慌てて目を逸らした。
足早に『朝の浜辺』の前から退散する。
どうしよう、目が合っちゃった……
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