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(仮称)ハルチャグウネの洞窟建設現場
私は、他のみんなより少し早く休憩を切り上げいつもの見廻りをする。
午後三時、すなわち十五時の休憩は、残り二時間のための儀礼的価値ある時間だ。午前十時の休憩よりも重宝される。
朝の八時から始まり十時に休憩。
十二時に昼食休憩をとり十五時に休憩。
そして十七時に解散、お疲れ様でしたとなる。
みんなには労働規則を守ってもらっている。どんなに遅れがでていても。
ここは『(仮称)ハルチャグウネの洞窟建設現場』。
建設を請け負うのは、父の経営するダンジョン建設株式会社だ。娘の私が現場の指揮を任され、いわゆる現場責任者を務めることとなった。
竣工までの進捗状況はというと、悪い。
悪いってもんじゃない。
遅れまくっている。
と、言えていたのも昨日まで。
とうとう竣工日を超えてしまったのである。
常識的にあってはならないことだ。
建設依頼をされた方は、この地よりはるか遠くに位置する王都、そこにおられる第一王子さまである。
「辺境の地を盛り上げたい。ダンジョン作る」
と、ご発言されて、まぁそこからの受注に至ったわけだけど……。
ダンジョンを冠した社名に恥じぬよう父が破格値で入札を行い、見事に勝ち取った。だがそのぶん、ツケがマルっと私に降り掛かってきたのだ。
費用が足らない。
下請けが引き受けない。
時間が足らない。
とにかくない。
幸いなことに、第一王子におかれましてはダンジョン建設のことすら忘れてる疑惑がある。いまだ咎めや確認がないのはそういうことなのだろうと思うと、むしろ助かった感がいなめない。まあ、それもどうなのかなって話ではあるが、第一王子を怒らせて厳しい処分にあったら大変だ。いまは着々と進めるしかない。
とにかく見廻りだ。
私は出来上がりそうで出来上がらないダンジョンを一刻も早く竣工させるため、喝を入れにゆく。
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