アイドルユニット『バピィ』

1/1
前へ
/7ページ
次へ

アイドルユニット『バピィ』

 私は、半ば彼らを素通りするかのようにそこを抜けると、その先には少し開けたエリアがある。 『戦闘広場』と称したエリアだ。  ここを通る時には必ず中程度のモンスターに遭遇するシステムになっている。ここで現れる中程度のモンスターは限定モンスターであり、モンスター紹介所からの派遣である。定期的な入れ替えをもってダンジョンの鮮度を維持する運びだ。  派遣と言えば専門職カラーが強かった時代もあったが、いまでは人員確保の大事な手段と言えよう。  ここでは同じ紹介所からきたモンスター組ユニット『バピィ』の『ギギラとガガラ』が待機している。  とも仲が良くってね。JK(女子高生)ならぬJM(女子モンスター)なもんだから毎日が楽しくて仕方がない。先日アルバイトの子がうっかりマイト(ダイナマイト)で爆発させちゃったときは、半日かけて笑いっぱなしだった。   うん、経費がかさむお話だね。 「ギィちゃん、ガァちゃん、トレーニングは忘れないでよね」  私が『バピィ』に声掛けすると「はーい」とギザギザした声で返事がくる。とても、かわいい。 「あ、ちょっとガァちゃん、むやみにネムーレ発動させないで」 『戦闘広場』周辺にいたアルバイトたちが一斉に眠りだした。ガァちゃんの魔法が放たれたのだ。そういうトレーニングじゃないのにな。  眠った子たちを起こすオキーレ発動。  一斉に起き出す。  ネムーレ発動、オキーレ発動、オドーレ発動──。 「コラ! やめなさい!」  この『戦闘広場』では、私の飾り立てた燭台が、それらしい雰囲気を出しているだけにとどまっていた。  炎が揺らめく。  ろうそく型LED電球での演出は省エネ設計。  ここで休憩時間の終わりを告げるチャイムが鳴り渡る。  同時進行でガァギィかわいい笑い声も鳴り響く。チャイムと合わさる不協和音がなんとも耳障りな休憩終わりとなった。  私が軽い耳鳴りに悩まされていると、なんだか上の階が騒がしいように聞こえる。なんだろう。  私は急いで一階へと行く。                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                  
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

15人が本棚に入れています
本棚に追加