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勇者ライト
「ちょっとどうしたのー? また事故かなんか?」
私は石の階段で地下一階にあがり辺りを見回す。建設現場で掲げるは『事故ゼロ』。ここの現場では安く落札したツケを痛感するほど、事故、ケガ、破損、喧嘩にあふれていた。「また事故かなんか?」のまたがあってはならない感覚も、どうやら私はとうの昔にズレてしまったようだ。
「ねぇ、なにが起きてるの?」
こういうときダンジョンって困るのよね。すぐに行けないもどかしさっていうの?
地上につながる階段あたりで騒いでるみたいね。私は業務用スマホで監視カメラのアプリを開き確認した。
遮へい物が多くて電波悪いわね。
Wi−Fiのこと第一王子と設計担当に相談してみましょ。
私は隠し扉を駆使して地上につながる階段エリアに到着した。階段下には作業員たちが集まっている。私が近づいたことにみなが気づくと「ココリさん、大変なことにぃ!」口々と私に訴えてくる。
人混みをかきわけ前へでると、そこには一人の青年が立っていた。まさか第一王子? とも思ったが、一度お会いした記憶の王子とは違った。
アポなしのアルバイト希望? でもなさそうね。
では誰?
え、なに?
「やぁやぁやぁ、我は東の国より参った勇者ライトであるぞ」
え、勇者て。
めっちゃカッコイイじゃん!
「これよりこのダンジョンを攻略致すに参った」
え、攻略て。
それよりめっちゃイケメンじゃん!
いやいやちょっと待て。
「ちょちょちょっと待って、勇者さんとやら。いくら顔が良くてもまだオープンできてないの。ほんとはオープンなんだけど諸事情によりまだなのよ。残念だけどダンジョンとして成立しないし立入禁止だし、ほんとごめん、帰ってくれるかな」
びっくりしたー。
本物の勇者来ちゃったよ!
初めて見た。
その手にお持ちの盾と剣……お高いんでしょう?
「せっかくの決め台詞が台無しじゃないか。そもそもオープンが間に合ってないとはどういうことなんだ。勇者にとってのダンジョンとはすごいんだぞ、分かるか? 勇者にとってのダンジョンとはなー、ダンジョンとはなー。
ゆえにステータス」
ステータス? そ、そうなのね。そっか分かった、それじゃあ、こうしましょう。
「うちで働かない?」
イケメン、逃さでおくべきか。
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