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相変わらず写楽の絵は、好き嫌いがはっきりするようであったが、それでも少しずつそれを買い求める人が増え、簡単には買えなくなってきていたものの、それでも蔦屋に行くたびに1枚は買い求めた。
しかし。
ある日を境に、突如として写楽の絵の値がつり上がった。
「重三郎さん、なんですか!この法外な値段は!確かに写楽の絵は少しずつ人気になっているとはいえ、これはどう考えたって不当な値上げですよ。」
既に顔なじみとなっていた彦次郎は、重三郎に詰め寄った。
「彦さん、違うんだよ。私が値上げしたんじゃないんだ。これを売りに来る者が、その値段でないと他に持っていくと言って聞かなかったんだ。私としても、説得してみたんだがね。」
重三郎は、そう言って困った顔をしてみせたが、「でもね」と言葉を続けた。
「存外、不当な値上げでもないんだよ。見ておくれよ。ちょっと前まで1枚100文だった大判が、150文になったっていうのに、それでも買っていく人が後を絶たないんだ。」
そう言って、重三郎はにやりと笑った。
「で、彦さんはどうするんです?」
しばらく考えた彦次郎だったが、結局写楽の絵の魅力には敵わず、なくなく150文を支払った。
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