<1・夢と希望の入隊式。>

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 というか、何ではじまりの町に来るのがわかっているのだろう?そもそも、はじまりの町って名前がよくわからない。まるで勇者誕生のために作られたような名前ではないか。 「なあ、エル。なんで勇者って、はじまりの町で生まれるものってことになってるんだ?」  伝承にはそうある。そして、時々勇者が現れて魔族と戦うのだと言う話も。確か、一万年前の魔王にトドメをさしたのも勇者だったのではなかろうか。 「つか、それがわかってんならよ。今のうちに始まりの町に総攻撃仕掛けて、レベル1の勇者を全戦力で抹殺すればよくね?ダンジョンで待ち構えたりしないでさあ」 「あーうん……それは思いました。でも、魔王様いわくダメなんですって」 「なんで?」 「よくわからないんですけど……なんか、システム的に無理とか、クソゲーになるから無理とか言われました」 「なんで????」  いや、その、何もわからないのだが。  クソゲーになって何が問題なのだろう。だって、自分達は勇者を倒し、人間を殲滅し、魔族の楽園を作るために戦っているはずなのだ。邪魔な勇者は、レベルアップしてくる前に踏みつぶした方が早いはずである。勇者は、はじまりの町を出発し、いくつもの町を経由して最終的に魔王城に辿り着くと聞いている。魔王城に来る頃にはいくつものダンジョンで鍛えて強くなっており、魔王とも互角に戦えるまでに成長しているのだというのだ。  なら、成長する前にプチっと潰してしまうのがてっとり早いはずではないか。  なんで勇者の成長を呑気に待っていてやらねばならないのか。 「僕に訊かれても困りますよう。僕だって新兵の一人でしかないわけですから」  ガロンの問いに、エルは困ったように眉をひそめた。 「それに、女神様、とやらがどこから勇者を連れてくるのかも誰も知らないみたいですしね。……何にせよ、魔王様の命令には逆らえないわけですし。僕達は自分なりに訓練して、強くなって、勇者を迎え撃つことだけ考えればいいんじゃないでしょうか」 「まあ……そーね」  この時抱いたのは、ほんの小さな疑問だった。  それがまさか、自分達の未来を大きく揺るがすことになるなど、一体どうして想像できただろうか?
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