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第9話 オーラ・セックス
「そう。男性が普通と思うのであれば、その相手をする女性もまた、アレを普通のセックスと思うようになります。今は若い女性でもセックス嫌いな女性も増えているらしいですしね。当然の結果だと思いますよ」
ししゃもを一口食べてから、烏龍茶を飲み、呆れた感覚も隠さずに本田は答えた。
蘭の中で、光助とのセックスがまた記憶に鮮明に蘇ってきた。
5月の少し暑い時期なのに、背中に悪寒が走ってくる。
あんな行為をされていれば。男性の自慰行為のために自分の身体が利用されるとすれば、セックス嫌いな女性が増えるのも、腑に落ちる事だった。
「今回の件、蘭さんは本当に大変でしたね」
本田はため息をつき、烏龍茶を口にした。
「そうね……でもだから以前に本田さんからお話を聞いた『オーラ・セックス』が私に必要だと思ったんです」
それは蘭の本心だった。蘭はレッドアイを口にし、一呼吸おいて本田の目をじっと見た。
「確かにそうですね。『オーラ・セックス』は私達人間が持っている『オーラ』をセックスに活用して、男女の肉体でそれを交流させることが出来ます。それを通して女性は性感帯と官能を全て目覚めさせ、別次元の快楽と幸福感を得られる。男性は女性の官能美を感じて、一緒に楽しむことで生きるエネルギーを得られる。本当の意味でのセックスですからね」
本田は両手を組んで、とても尊いものについて語るような口調で話した。
内容はセックスのことなのに、その言葉には澄んだ神聖さの様なものを蘭は感じた。
「それって、女性の私も身につけることが出来るんですか?」
これは蘭が今日、本田に一番聞きたい事だった。それが出来ない場合は、それが出来る男性を探さなければならないと蘭は考えていたからだ。
「……『オーラ・セックス』は本来男性が習得し、それを女性に対して使う事でお互いの性のレベルを高めるものです。ただ最近ですが女性向けの講座も始めたんですよ。女性自身が習得し、それを男性に教えていく。そういう女性も増えているのでね」
本田は神妙な顔つきで答えた。
「良かった。それなら私も学ぶことが出来るんですね」
蘭はほっとした表情を浮かべた。ずっと気になっていたのだ。
「もちろんです。しかし……蘭さんが『オーラ・セックス』を学んで自分のものにしたい。その一番の理由って何ですか?」
本田は透明感のある瞳で、蘭の瞳をまっすぐ見ながら尋ねた。
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