花ちゃん

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19時30分。帰宅すると、玄関に見慣れない花が飾られていた。 花びらがツンとして開く青い花。 俺と同じ名前の花。 「ただいまー」 帰宅した事を告げると、リビングから「おかえりー」と返事がして、ビーズの邪魔くさいのれんを退けて姉ちゃんが顔を出した。 お風呂上がりのようで、頬が赤くのぼせ顔だった。 その間抜けな顔を見て癒されている自分。 相変わらず無防備な姉ちゃんはシャンプーの香りを漂わせながら、丈の短いキャミソールとショートパンツの姿で玄関で靴を脱ぐ俺の前に立つ。 ホカホカとした湯気のエフェクトが出てきそうな姉ちゃんの姿に「風邪引くよ」と注意をする。 「大丈夫大丈夫」 何を根拠に大丈夫だと繰り返すのか。 短い廊下を姉ちゃんと歩きながら、小さく狭い台所に目をやる。 シンクの中にはフライパンとまな板とボウルが乱雑に放置されていて、存在を俺にアピールしていた。 早く洗ってー。綺麗にしてー。 そんな料理道具達の悲痛な声が聞こえそうだった。 「今日の夕飯はハンバーグだよ」 姉ちゃんが自信ありげな口調で今晩の献立を告げる。 どうやら上手く作れた様子。 ビーズののれんを二人で潜りながら、冷房の効くリビングへと足を踏み入れる。 エアコンの風に乗りハンバーグの唆る匂いが鼻腔を突き抜けて、自分が空腹であるという事に気付かされた。
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