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《出会い》
一体どういうことなのだろうかと考えては牛男に尋ねようとすれば馬車が止まった。豚男がドアを開け放った。
「着きました、業火様。そしてペットの――」
「ペットではない! 主人のペレだ、不死鳥のペレだ!」
「は……はぁ?」
豚男が怒鳴っているペレに首を傾げつつも軽く謝罪をした。だが怒りが収まらないペレは豚男を突こうとするので、業火がくちばしを掴み、身体を自身の方へ引き寄せた。
「こら、業火! 我は偉い偉い不死鳥様なのだぞ。この豚男を始末してやるっ!」
「はいはい、もういいから。すみません、この馬鹿鳥は押さえつけておくので案内してくれますか?」
「は、はぁ……」
豚男が申し訳なさそうな表情をするが、気にせずに業火はペレを抱き寄せて案内に従った。豚男が先頭を切り、牛男が隣に付いてくる。
大きな城内に入れば、多くのメイドたちが出迎えてくれた。人間も居れば怪物などの怪物のメイドが業火に向けて深々と礼をする。
「「「おかえりなさいませ」」」
「あっ……す、すごい、な……」
すると一人の金髪の美少女が牛男に駆け寄ってきた。
「牛男様、業火様を朝食にご案内しても?」
「あぁ、風菜か。業火様は王の後継者になるかもしれないお方だから粗相のないように」
「はい! わかりました!」
碧眼の美少女に業火は見とれてしまうと風菜と呼ばれた少女は華やいだ笑みを見せる。
「初めまして、業火様。わたくしは風菜と言います。さぁ、こちらへ!」
「あっ、はい!」
ゴシックロリータ―をひらひらさせて嬉々として業火を案内する風菜に業火は街の人々とは大違いだな、そう感じた。
街の人間や怪物はまず、業火の煌めく金色の瞳を見て怯えて去ってしまう。文句を言われるのはまだ良い方で物を投げつけられたこともあった。
ペレを拾って育ててからは孤独ではなかったが、親にも捨てられた業火は孤児院でずっと一人きりで友達さえも居なかった。
友と語らい笑顔で居ることが幸せだと気付くのはペレと出会わなければ一生気づくことはなかっただろう。
そんななかで風菜を含めた魔界の王たちは歓迎してくれている。それは牛男が言った、自分の中に潜むもう一人の人格なのか。
「あの……、すみません朝食も用意してくれて……」
「いえいえ! こちらこそ、朝に起こしてしまって申し訳ありません。ご子息の方も既に食べ終わってご紹介したいぐらいなんですよ!」
「……はい?」
「娘! 我を忘れるではないぞ!」
ペレが風菜に怒っているがこの鳥が人語を話せることに驚いた様子だ。零れそうなほどの大きな青い瞳を爛々とさせて、ペレに向く。
「すごい……、業火様のペットは賢いのですね。驚きでいっぱいです」
「我は不死鳥のペレだ! この小娘が!」
「ペレはこの方にちゃんと謝らないと、食事抜きだからね」
業火が忠告すると、ペレは羽を揺らしてから「……すまぬ、娘」謝罪をした。風菜はペレがか細い声で謝罪をしたことよりも可愛らしい姿に胸を打たれたようだ。
「なんとも可愛らしい……! 業火様のペットは賢いのですね!」
「えっと、ペレって名前だからよろしくね」
「あ、はい! ペレ様ですね!」
あまりにもペレが不憫に思えたので業火は注釈を付けたのであった。
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