《伝説》

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《伝説》

 朝食を終えて風菜に導かれるまま、王の部屋へと向かう業火とペレではあるが王がなぜ自分を呼んだのかが未だに不明であった。 「あの……、どうして俺が呼ばれたんですか? 金色の瞳だからって、人格が二つあるだなんて聞いたことないし……」 「我もそのような業火を見たことがないな!」  疑念をぶつけるが風菜は業火の手を離さずに部屋へと連れて行く。これまた大きな扉に出くわした。 「業火様にはそのようなお力があると、王が言っております。さぁ、こちらへ」  中へ入ると、男性のうめき声が聞こえた。風菜は駆け寄って心配する素振りをする。 「大丈夫ですか、深緑(しんりょく)様! お身体が痛みますか?」 「あ、あぁ……、大丈夫だ。それよりも、金眼の青年は連れてきたか?」 「はい、こちらに! 業火様とペレ様です!」  そこにはひときわ大きな男性がベッドに横たわっていた。巨人族かもしれないなと業火は感じた。  深緑と呼ばれた白髪で緑眼の王は業火を見ると急に止まる。それから手を差し伸ばした。 「来てくれて嬉しいぞ、金眼の青年よ。私は深緑だ。この国で王を務めている」 「は、はぁ……。えっと、俺は業火と言う者です。こっちは不死鳥のペレと言います。よろしくお願いします」 「よろしく頼むぞ、老いぼれ!」  右手で握手をしてから左手でペレの頭を殴った。ペレが痛みで鳴き声を上げているが業火は構わずに頭を下げる。 「この馬鹿鳥が申し訳ありません……。根は良い奴なんですが、極端に馬鹿で失礼な奴なんです」 「なっ! ひどいではないか、このたわけ者!」 「ひどいのはお前の方だよ。失礼なことを言わない」 「す、すまなかった……」  躾け直す業火と頭を下げるペレに深緑は瞳を丸くしたかと思えば、一人納得した様子であった。  不審に思う業火に深緑は瞳を輝かせたかと思えば真剣な眼差しをした。 「よく聞くんだ、金眼の青年よ。お前にはもう一つの人格がある。これは絶対だ。……なぜならば、その鳥を従えているからな」 「……どうしてペレが一緒だともう一つの人格があると分かるのでしょうか?」 「伝説の通りだからだ」 「――えっ?」  どういうことだと言う業火に深緑は横になってから子守歌のように歌う。 「魔界が瀕した時、金眼の青年が鳥を携えて現れる。だが、その青年には二つの魂が宿る――危険な存在」 「危険な、存在……」 「その青年、光と影を持ち、影を支配して鳥をも統べれば魔界の王となる……。すまない、私は眠る。風菜、金眼の青年の部屋を用意しておけ」  風菜が返事をすれば深緑は眠りに着いた。神経をすり減らしたように眠るその様に業火は本当に王が病魔に襲われているのだと知る。  風菜に手を取られ、部屋を後にした。 「さぁ、業火様。お部屋に案内させていただきます。これからはここで生活なさってください!」 「えっ、こ、ここで!?」  急な話に業火はひどく驚いたのだ。
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