《不死鳥と金色の瞳》

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《不死鳥と金色の瞳》

 闇夜に流れる魔界。そこには闇にはそぐわない輝く金色の瞳を持った青年がベッドから起き上がった。  青年が起き上がったのは自分が助けて作り上げた、灰の結晶である不死鳥――ペレが突然、腹の上に乗っかったからである。  今は小さな体型をしているが、重さはかなりあった。 「ぐっふぅ……! なんだよ、ペレ~。重いよ!」 「もう昼だぞ、業火(ごうか)。さっさと我に食事を摂らせろ」  鳴き声を上げる赤々と煌めく不死鳥に業火は息を吐き出した。ペレと出会ってから孤独ではなくなったが、ある時期から人間言葉を覚え、さらには命令口調になっている。憤りを通り越して呆れてしまうのが業火の優しさだろうか。  業火は長い黒髪をブラシで結わいてキッチンへ向かった。冷蔵庫を開けるとベーコンと卵しかない。そろそろ買い時かなと業火はふと思う。 「じゃあベーコンエッグね。食べ終わったら買い物に出かけるよ」 「卵だと!? 貴様、我を愚弄する気か!」 「……ペレは鳥だけど素材は灰でしょ。自分を普通の鳥だと思うな、馬鹿」 「なっ、き、貴様!」  吐き捨てるように馬鹿扱いをしてフライパンに油を注ぎ、火を付けてベーコンを焼いてから卵を割って入れる。  じゅわぁと音が鳴って業火も腹を空かせた。キッチンを探してみると、食いかけのパンがある。 「ペレ、お前食べたでしょ」 「我が食べて何が悪い」 「……卵なしね」 「卵はつけろ!」  パンをトースターに入れて焼いている間にベーコンエッグが出来上がった。半分に切り取って皿に切り分ける。パンも焼き上がった。  ペレが器用に羽ばたいて机に乗っかり、鳴き声を上げた。それから嬉しそうに震える。  業火は嬉しくなった。 「じゃあ食べようか、いただきます~」 「いただくぞ!」  一人と一匹は仲良く食事を共にした。  食事を摂ってからペレと一緒に業火は街へと繰り出した。だが街は業火の輝く金色の瞳を見て畏怖を感じさせる。  魔界では金色の瞳は忌避を伴わせるのだ。それを生まれ持って生きている業火に魔界の人々は今でも恐怖に感じている。  金色の瞳は災厄を招くとも言われているのだ。 「おばさん、野菜と卵を――」 「はい、これねっ! もう、出てってちょうだい!」 「あ、はい……。すいません」  金を払って投げ捨てられるように商品を受け取れば、おばさんの顔は恐怖で満ち溢れていた。そんなに自分は怖いのかとペレに聞いたこともあるが、ペレは「貴様など赤子同然だ」逆に馬鹿にされた。  ペレと歩きながら業火は自分から離れていく魔界の人々に嫌気が差した。金色の瞳というだけで罪人扱いされるのはこれ以上なく遺憾だからだ。 「……そんなに俺って、悪い奴なのかな」 「卵は無事か! 割れなかったか?」 「大丈夫だよ。卵は割れていないから」  俺様だがお馬鹿な友人の不死鳥に業火は助けられる。だが家に戻ると老人が立っていた。老人は肩をビクつかせて業火の家のポストに手紙を入れたかと思えば、逃げ出す。  業火は嫌な顔をした。 「なにあれ。まったくひどいな~」 「何か入れたぞ! 中身を見てみろ!」 「はいはい」  ポストの中を探れば、一通の手紙が。――それは魔界の王からの招待状だったのだ。
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