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王もダメ、姫もダメ、町の人々に弁解しようにも、そもそも警戒して引きこもっているので、まず出くわす事がない。
空はこんなに青いのに、海はこんなにも澄んでいるのに、そして太陽はこんなにも燦々と輝いているというのに、俺の心が晴れる事はない。
ここに来れば楽しい生活が待っていると思っていた。それなのに、待っていたのは恐ろしい程の孤独。
「ここでも独りぼっちじゃないか……」
世界中のどこにも、俺の居場所はない。この世界は希望に満ち溢れているはずだったのに、絶望しかない。
「あらこんな所にいたの、情けないわねぇ」
「お、お前っ‼︎⁉︎」
何故だ、何故真魔王がここにいる。魔界ソーシャルを操れるのはこの俺だけだ。この女は魔界で婚活、いや結婚詐欺まがいの事をやらかした女としてタグ付けされ、そして炎上したはずだ。この世界では悪い意味で有名人。まさかのこのこ帰ってくるとは思いもしなかった。
「お、お前、帰ってきたって人生詰んでるんだぞ。それなのに、何故帰ってきたりしたんだ」
「だって、あっちにいたって変なモンスターしかいないし、つまんないんだもん。モンスターに抱かれるわけにもいかないじゃない?」
「どんな性格しているんだ……」
どっちの世界にいても詰んでいるなら、まだこっちの世界の方が望みがあると言い出した。この女にとってはどんな財宝よりも、人の形をした男という存在の方が最重要なのだ。
独り身の訳ありだけは絶対に避けたい。俺に求婚してきた当初からそこだけは譲れないと言っていた。勇者パーティの一味で最強の白魔道士。彼女の肩書きに申し分はない。誰もが憧れるスーパーエリートだ。ただ、そこまでの肩書きのある彼女が、独身彼氏なしというのはやはりイメージ的に宜しくない。彼女のプライドが許さないのだ。
ここにいれば、ワンチャン悪女好きの変わり者がいるかもしれないし、人の噂は75日と言うだけあって、そこさえ過ぎてしまえば案外とイケるかもしれない。モンスターしか残されていない魔界で生きるより、1%でも望みのあるこちらの世界に戻る方が良いと決断したようだ。
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