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優しさと良心
彼女の選択は正しかった。帰国した途端、この国の白魔道士達は俺の存在など忘れたかのようにあちらこちらから飛び出して来て、祭り事のように大盛り上がりを見せた。
勇者と黒魔道士がやられた中、白魔道士の彼女のみが生きて帰還したのだ。回復に特化した魔法を操る白魔道士は、今まで攻撃型の勇者のサポート役でしかなかった。がしかし、今回彼女が帰還した事で、魔王と唯一張り合えるのは白魔道士であって、白魔道士こそが真の勇者だという話になった。
頼むから魔界ソーシャルをまじめに読んでくれ。この女は真の勇者などではない。根っからの魔王なんだ。
あぁもどかしい。こんな奴が英雄扱いされてもてはやされるなんて。理不尽すぎて吐き気がする。
お祭り騒ぎが落ち着き夜がふけった頃、洞窟に引きこもっている俺のところに、コソッと彼女がやって来た。
「何しに来たんだ……」
「あら、元気がないわねぇ」
当たり前だ。真面目な奴ほどバカを見るというが、まさにこれ。何もかもがバカバカしくて虚しくて堪らない。
「そんな顔しないでよ。あんたの事、助けてあげるからさっ」
「え?」
まさか、一生奴隷でいろとか何か恐ろしい条件をつけてくるのではないか。そう思って身構えていたのだが、彼女から出た提案は驚くべきものだった。
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