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「言っておくが、俺にも選ぶ権利がある。お前のような下の下の女に興味はない。消え失せ……えっ⁉︎」
“神聖なる光の魂よ我に宿り闇を切り裂かん”
「ま、待て待て待てっ‼︎‼︎‼︎‼︎」
なんとこの魔導士の女、闇属性に大ダメージをくらわす俺の一番嫌いな魔法“天聖のホーリアス”をサラッと唱え始めたじゃないか。この魔法、そんやそこらの魔導士では習得出来ないはず。
この間チラッとダンジョンを彷徨いていたのをセキュリティモニターで覗いていたが、勇者と共に諦めて帰って行ったのは何だったんだ。この女、もしかしてめちゃくそ強いのか?
「何よ、どうすんの? 私の事貰ってくれる?」
待て待て、一体この女どうしたっていうんだ。魔王は一番の嫌われキャラだぞ。どこぞの女が俺に貰って欲しいという考えに至るんだ。やはりこいつ、混乱系の毒か何かにやられたな。
「ほれっ」
とりあえず、俺は毒消しの瓶を投げつけてやった。
「い、痛った〜〜〜い……。何すんのよ‼︎‼」
特に効果はなし。毒には侵されていないようだ。では次、混乱系の魔法を解くアイテムが確か棚にあったな。
「ほれっ」
バシャー
「つ、冷たっ‼︎‼︎ 何すんのよっ‼︎‼︎」
これまた効果なし。結構お高めなアイテムなのに、勿体無い事をしてしまった。ラスボス戦は滅多に無いのに、無駄な経費を使っている場合ではない。
「とにかく、一度帰って治療を受ける事だな」
「は⁉︎ 私、どこもおかしくなんか無いわっ」
「無駄な戦いはよそう。アイテムもMPも勿体無い」
「何なの、あんた主婦なの⁉︎ 勿体無いってどういう事?」
「つべこべ言うなやかましい」
その後もギャーギャー喚いて埒が明かない。女の扱いを間違えると痛い目に遭うと魔界の掟書にも書いてあったことだし、一応話だけは聞いておく事にした。
「何⁉︎ 光の国には希望がない、だと⁉︎」
「そうよ、一昔前までは白魔道士の女は清楚で可愛いって人気だったのに、ブームが去って今は黒魔道士の時代なの」
目の前にいる白魔道士は清楚でも可愛くもないが、そこは目を瞑ろう。なんと、光の国ではブームというものがあり、姫は別格として今は凛とした強さとクールさを持ち合わせている黒魔道士の女が人気だそうだ。
「私、勇者パーティで魔界をうろついている間に結婚適齢期をちょっと過ぎちゃったのよ。それなのに、今は黒魔道士がブームっていうじゃない。可愛いキャラで売り込める男がいなくなっちゃったわけ。私なんて勇者パーティに選ばれたエリートなのに、独身なんて相当な訳ありだと思われちゃう」
訳ありで間違いないと思う。
「で、何故そこで魔界の王である俺を選ぶという発想になるんだ」
「だって、あんたなんて誰も選ばないでしょ。魔界の王に無理やり求婚されたって事にすれば、悲劇のヒロインにもなれるし、姫しか狙わない魔王が白魔道士を選んだってなりゃそりゃ話題にもなるでしょ。お願い、話合わせといて。あんただって見込みのない姫を一生追い続けるより、私と一緒になった方が幸せだと思うわよ」
俺は問答無用でセーブポイントを全て破壊してやった。そしてリターンの魔法をサッと使うと、面倒な魔導士を元の世界へ送り返した。
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