今すぐ貰って魔王様っ

魔王の陰謀

　あの女はバツが悪いのか、今のところ気持ちが悪いくらい静かにしている。

「魔王‼︎‼︎ お前の汚いやり方にはうんざりだ」
「勇者よよく来たな。早速で悪いが俺を助けてくれないか」
「は⁉︎」
「そこにいる白い布の女に、脅されているのは知っているだろう」
「あれはフェイクなんだろ。流石に犯罪だぞ。その手口には乗らない‼︎‼︎」
「交渉しようじゃないか。もし俺を助けてくれたら、お前の醜い本性は晒さないでおいてやる。俺は何でもお見通しだ」
「……」
「ちょっとどうしたのよエルダー‼︎‼︎ 何じっくり考えちゃってるの‼︎‼︎」

　そりゃあじっくり考えるだろうな。人生がひっくり返るかもしれないんだ。このエルダーと言うポンコツ勇者は、姫がいるにもかかわらずパーティの黒魔道士にも手を出している。大抵暇にしている俺は裏垢のチェックもおこたらない。鍵のかかったものでも俺の力なら読めちゃうもんね。

「勇者エルダーよ。俺はただこの世界に生まれただけで悪者扱いだ。姫を狙ったのも、光の国を落とす目的などなく単なる一目惚れなんだ」
「そうなのか⁉︎」
「あぁ頼む信じてくれ、それに、本当の魔王はあの女の方だ」

　欲深くずる賢く、思い通りにならなければ力技で押さえつけようとする。気性は荒く可愛げもない。どう考えても勇者の一味というより魔王だろう。

「確かに、白魔道士にしては様子がおかしいとは思ってたんだ。清楚でも可愛くもなくやたらと煩いし。タイプじゃないって言ったら喚(わめ)くし」
「え、エルダー……」
「まさかこいつ、仲間のふりをしておいて、俺たちを油断させたところで全滅させるつもりだったとか」
「そ、そんな訳ないでしょ‼︎‼︎ あんたね、そこのポンコツ魔王に寝返ったりなんかしたら、どうなるか分かってるんでしょうね‼︎‼︎ 私も知ってんのよ、あんたがそこのスカした女とイチャコラしてるって事‼︎‼︎ 王が知ったらどうなるんでしょうね‼︎‼︎」
「やはりこの女は君の言うとおり魔王で間違いない‼︎‼︎ 君を助けよう、そしてパーティに参加してくれっ、今すぐ真の魔王を討伐しようじゃないか‼︎‼︎」

　ははは、シナリオ通りの展開だ。もともとこの女の巻いた種。悪いが魔王職は引き継いで貰う。俺は光の国の勇者の一味として、幸せライフを過ごすんだ。