心機一転

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「この命尽きようと、お前をここから先には行かせない‼︎‼︎」 「お、おい番人っ、俺は戦いに来たわけではない。話を聞いてくれ」 「問答無用‼︎‼︎」  何故なんだ。今日に限って魔界ソーシャルを確認しなかったのか。頼む、俺のポストをスルーしないでくれ。  そんな願いも虚しく、俺は一方的に攻撃を受ける羽目になり、仕方なく番人を黙らせる事になってしまった。 「くぅぅ、光の国もここまでか……」 「ま、待って下さい王、いやお義理父様‼︎‼︎」 「は? お義理父様だと‼︎‼︎」 「はい。わたくしマレフィクスはこの度、悪の一味を倒し、この世界に平和をもたらしました。ディアナ姫の幸せは、このわたくしにお任せ下さい」  その言葉を聞いた王は、目をひん剥きながら怒り狂いだした。何を馬鹿げた事を言っているのかと。お前は光の国を滅亡させるために娘の婚約者を殺害し、そしてこの国を侵略しに来た。そんな見えついた嘘をつくなと言われてしまった。 「ち、違います‼︎‼︎ あの勇者はパーティの黒魔道士とできていて、ディアナ姫を裏切っていたのです‼︎‼︎ だからわたくしは‼︎‼︎」  何度訴えたことか。それでも俺の話を信じようとはしない。それどころか、あの勇者と黒魔道士の事を、殉職した聖人として持ち上げ始めたじゃないか。 「どうか信じて下さい‼︎‼︎ 姫を幸せに出来るのはわたくしマレフィクスだけです」 「お父様……。この世界を救うためには私が捕虜になるしかないのですね」 「駄目だディアナ‼︎‼︎」 「ですが、方法はこれしか……」  なんて気まずいんだ。これではまるで、俺がディアナ姫を無理やり自分の物にしようとしているみたいじゃないか。俺は今魔界にいるあの白い布の女のような事はしない。 「違うんですディアナ姫‼︎‼︎ 俺はあなたを捕虜にしたいんじゃない。純粋に愛して貰いたいだけです。一目見た時から、あなたに惹かれておりました」  この一途な思いを必死に吐き出しているというのに、目の前の王と姫は悲しみにくれながら抱き合い、この世界のためだなんやらと悲劇のストーリー展開に浸り切っている。  これでは一般的なRPGゲームの展開と何も変わらないじゃないか。結局、俺は姫をさらう悪者として位置付けられてしまう。何とかこの悪いイメージを打破したい。  がしかし、誰も聞く耳を持たない。 「一旦出直します……」  俺は城を離れると、しばらくの間暗い洞窟の中に閉じこもる事になってしまった。
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