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春から初夏、光る
四月の始業式。
ずらりと壁に貼りだされたクラス表を見ると、名前がたくさん。クラス全員が名前に変身して、紙のうえで整列してるみたいだ。
「江梨! 今年も一緒だね。良かったぁー」
ぼうっと変な考え事をしていたら、里奈が抱き着いてきた。
里奈はインターハイまで、小学校から続けてきた剣道一筋だった。そのうえ数学が大好きという面白いコだ。必死で勉強して、ようやく引っかかっているような私とはレベルが違うのだけど、話も合うし、趣味も合う。さっき、紙の上に里奈を見つけてほっとしていたところだ。
「うん、ほら、他のメンバーもあまり変わっていないよね。里奈と私と、よりこちゃんも綾香ちゃんもいる」
「本当だ」
そう話していて、ふと、横を見た。
そこに彼がいた。
他数名の男子の間から、こちらを見てる。誰だったっけ。思い出そうとして私が首を少し傾げると、彼も合わせたように首を傾げてみせた。変な奴。
「何、どうしたの? 江梨」
「ん、あっちに変な奴がいる」
「え? 誰?」
里奈に教えようと彼の方向を見たけれど、もう彼はこちらに背を向け、他の男子達と歩き出したところだった。
「んー、誰?」
「えっと、……よく判んないや。けど、目が合ったの」
「ふうん、そうなんだ。でも何で気になるん? 格好良かった?」
うーんと唸り、彼の顔を思い出そうとする。黒い真っすぐの髪を短く切り上げていて、前髪を上げていたような気がする。そしてその印象的な子犬のような目。
「……あ。もしかしたら、前見たことがあるかも」
「そうなの? でもクラスも違うんだよね? 何組かな。見に行ってみよう」
里奈に促され、彼が立っていた場所まで行った。
クラスは三年八組だった。うちの学校は理系と特進クラスの他、情報処理科というクラスがある。主にプログラミングからExcel・Wordまで網羅するのだけれど、実業系だから就職率も抜群というクラスだ。
「名前は知ってる?」
「ううん、顔しか知らないや」
へえ、残念と里奈が呟いたとき、予鈴が鳴って、私達も慌てて教室まで走った。
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