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思わず声を掛けてしまった。
「あれっ……。君、もしかして……白川第三高校だったりする?」
「えー……と、まあ、うん」
里奈はきょとんとしている。そうだ、里奈はこの子の顔見たことないんだった。実は私もよく覚えていない。今頭にバンダナ巻いてるし、顔で判るっていったら、その子犬のような目だったはず。
――ん? 子犬って感じじゃないな。
「あ、ごめんなさい。ちょっと似てる人がいたんで」
「そうなんだ。――ごめんね、今仕事中」
そう言うと、彼は食券を奥の店長らしき人に渡し、その後は、他のお客からの注文を取ったり、食器を片付けたりしてこちらを振り向きもしなかった。
忙しそうだ。うん、何だか気まずい。
「ね、知ってる子だったの?」
里奈がそうっとひそひそ声で話しかけてきた。
「うん……前話した、目の合う子。ほら、クラス分けの日に私見てた」
「あー、あの子。で、当たってた?」
「うーん、人違いだったのかも……」
それはちょっと恥ずかしいね、と里奈に言われて、本当に恥ずかしくなってきた。
「どんまい」
「えー、やめてよ」
そんな私達に、店主が「お待ちぃ」とラーメンをカウンター越しに出してくれた。その向こう側にいる彼に見られるのが恥ずかしかったけど、ラーメンはまあ美味しかったのだ。
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