偽物メーカー

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「お、そろそろか」 その足で澤乃井は裏庭に向かった。 と、ここでも数人の白衣の男たちが頭を寄せ合って屈んでいる。 白衣の男たちの視線の先にあるものは・・キノコだった。 もちろん、このキノコも澤乃井が作ったものだ。 いかにもキノコが生えそうな裏庭に仕込んだのも澤乃井のこだわりだ。 このキノコは 時間になると膨らんで 時間になると元通りになる。 設定した時間になると腰をかけられるシステムだ。 普段は小さなキノコなので収納問題に特化している。 設定時間に向かってじわじわと大きくなり ちょうど幼児用の椅子の座面ほどの大きさになったところで 形状が固定される。 「これはサルノコシカケのような」 「ほうほう、そのような」 「でも、こんなサルノコシカケは見たことがないですよね?」 「これは新種でしょうか」 今度はパソコンだの拡大鏡だの アイテムを手にした白衣の男たちがキノコの観察をしている。 それは、キノコ研究員のメンバーだった。 澤乃井は遠くに見えるメンバーに向かって 「はいはい、どいてくださいねぇ!」 と、大きく手を振りながら大股で近づく。 研究員は澤乃井を無視してキノコに夢中だ。 「焼いて食べますか?」 どこからともなく網を出してきている。 「焼くな! そして食うな!」 澤乃井は小走りする。 「うわ!これは!」 キノコ研究員からうめき声が聞こえる。 一歩及ばず・・ 「てか、わかるだろ」 お構い無しに焼かれたキノコから 何かわからない変な色の煙が一筋昇ると小さく爆ぜた。 刹那、たちまちけたたましい警報音と共に 防護服を纏った男たちがわらわら現れた。 ブシューーー 焼かれて小さな火柱を上げるキノコに 盛大に白煙をぶちまける。 「あいつらが来た」 有毒サイエンスラボチームだ。 「あーあ、オレの『椅子型キノコ』・・」 有毒サイエンスラボチームの面々が仁王立ちしている。 ボロボロになって見るも無惨な澤乃井のキノコを 密閉パックに回収するとわらわら行ってしまった。 はあああ 裏庭に一人取り残された澤乃井が大きくため息をつく。 ふと見上げた。 一羽の鳥が青天の空を横切っている。 澤乃井はニヤっと笑った。 そして、この研究所だらけの大学にある 自分の研究室に足早に戻って行くのだった・・。
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