狼少年

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 少年はこの狼に拾われた。  ごく小さな頃、恐らくは山に捨てられた少年は、当時ボスだった狼の群れのみんなに育てられたのだ。  しかし昨年の秋、ボスとペアのメス狼が病気で死んでしまった。群れの狼達はボスを交代させ若い狼を新しいボスにした。ボスは必ずペアを伴っていなくてはいけない、という掟があるにしろ、ボスの座から下りた狼に対する仲間の態度は冷たかった。そこには人間の子どもを育てることへの疑念や不満があったのかもしれない。  そのまま留まることもできたが、元ボスは群れを離れることにした。そして少年は出て行く狼についていく道を選んだのだ。  人語は話すことも理解することもできないが、少年は親狼とはまるで会話するようにスムーズに意思疎通ができる。  彼の毎日は親狼と共に山の中を駆け回って狩りをすること、食べること、そして眠ることで構成されている。
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