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「ふーん」
自分から聞いてきた割には、興味のなさそうな返事だった。
恋顧が、ほっぺたをふくらませる。
「へっ! いいもーんだ、おまえが冷たくても、ねこちゃんたちがおれのこと、構ってくれるもんね。……どうしよっかな」
並んで見つめ合っている二匹のねこを、交互に見やる。
「一気に両手で撫でたら、めっちゃふわふわだろうなあ。これぞまさしく、両手に花だ」
「きっしょい発想やな」
「うるせぇ! 全世界のねこ好きに謝れ、バカ」
大声でツッコみ、ねこたちに手を伸ばす。
ねこの身体が、俊敏に動いた。
「あっ!」
手にできた引っかき傷を、反射的に押さえる。
「サバトラちゃんに引っかかれた……」
「アホ」
想思が、さっ、と歩み寄ってくる。
おびえたねこたちを刺激させないように足音を殺しながらも、素早い身のこなしだった。
「見してみ」
「うん……」
傷は浅いようやな、と、両手で恋顧の手を取り、観察する。
「不用意に近づかんとき。ケガするで」
「でも、かわいかったから」
「かわいいからといって、軽率な行動すんな。アホ。考えて行動しろ。見ろ、あん顔」
サバトラの方を指す。
「なに、俺のスケに手ェ出しとんじゃワレ! いてまうぞ! ってツラや。いっちょまえに。逆鱗に触れたんよ」
「おまえら、カップルだったのかあ」
「え、今更?」
想思が唇をへの字にする。
「にぶいなあ、お前」
「あのっ、すみません」
ねこの前でしゃがみ込んでいた二人に、後ろから声がかかった。
「あっ、ハイ」
恋顧が、とっさに振り返る。
背のやや低い、長い黒髪の女のひとが、恋顧を上目遣いで見つめていた。
「あ、やっぱりネロだ。こんなとこいたの、ネーちゃん」
「語弊があるネーミングやな」
「黙ってろ」
恋顧がささやいてくる想思を一喝して黙らせ、
「そっ、そちらのねこちゃんだったんですね! すみません、勝手にさわらせてもらってて」
と、両手をオーバーな動きで合わせた。
女のひとは、わたわたとして手を、顔のわきで振る。
頰を押さえて、つづけた。
「いや、えとっ、……いえいえ、こちらこそ、ケガさせちゃったみたいで。ほんとうに、すみません」
合わせたまま微動だにしていなかった恋顧の手を、そっと握る。
「うぇっ!?」
恋顧が、目に見えてわかるくらいにのぼせあがった。
「あの、もしよければ、おわびに今度、ご飯でも……」
「ええっ? えっと」
勢いに流されかけた彼の肩に、手が置かれる。
想思が、無表情で言った。
「さ、買い出し行こか。いっかい家、戻るよ」
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