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そうして始まった生活は、あの頃の、リリアが生きていた頃の生活と本当によく似ていた。私が仕事を始めたのは三年前。二年間は、リリアと日中の二人きりを満喫していたのだ。懐かしさが心を占めるたびに、同時に心を苦しめた。それでもレヴィと名付けた新しい家族に、心を癒されていく日々でもあった。
一時期は本当にふさぎ込んで、家からも出られなかった。私の不注意で、大事な我が子が死んでしまったのだから無理もないと私は言いたい。言いたいけれど、そんなことは堂々とは誰にも言えなかった。夫にさえ経緯は話したけれど、だからふさぎ込んでも仕方ないでしょうなんて言えなかった。
それから、一つ意外だったことがある。それは和生くんが家にやってくるようになったことだった。沙織ちゃんは最初の数回来ただけだった。けれど、和生くんはそれからもずっと通ってくれていた。あの一日来なかった日を、私は心の中で責めていたけれど、誰だってうっかりすることはある。そして、私という頼れる存在がそのときに役に立ったという事実を受け止めなければならない、と思ったのだった。
和生くんは時折、お菓子を持ってやってくるようになった。聞くと、両親に事情を全部話したらしく、親に持たされたのだと言っていた。
「母ちゃんがもっていけって」
そう言っていつもの仏頂面をぶら下げて、彼はやってくる。その姿を私は微笑ましく見られるようになった。一度だけ、母親が共にやってきたことがあって、そのときは驚いたが、見知らぬ人の家に通っているなど心配だったのだろう心中を察して私は珈琲を淹れてもてなした。あのときの私の印象が良かったのかは分からないけれど、和生くんは月に数回学校帰りや休みの日に遊びに来るようになった。
学校が休みということは夫も休みの日ということになり、夫とも顔を合わせたお陰か、夫もなにか安心したような様子をしていた。そういう日々を過ごす中で、私は自分の中にあった闇をすこしずつだが排除できていった。
私の生活は仕事を始める前となに一つ変わらないものとなった。夫とも明るく話せるようになり、レヴィと三人で戯れる時間も取れるようになった。私はこの子を育てる中で、私自身も育てることに成功したのかもしれない。それでも、リリアのことだけは忘れないだろう。忘れてはいけないのだ。ただ今は、レヴィとたまにやってくる男の子の成長を見守っていきたいと思っていた。
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