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セックスをした後、相手が愛おしくてたまらなくなるタイプと、相手がどうでもよくなるタイプに別れるらしいが、コイツは後者のようだ。
汗と体液に塗れた俺をベッドに転がして、ヘッドボードに背を預けて煙草に火を点けた男を鈍く痛む腰を擦りながら、うつ伏せたまま見遣る。
「アンタさ、冷てぇよな」
口を開いたら、男はふぅーと紫煙をひとつ燻らせて、じっと俺を見つめたかと思えば煙草を灰皿に押し付けて、言葉を封じるように唇を覆ってきた。
(煙草臭ぇ)
被さった唇の中で輪廓をなぞられ、薄く開いた上唇と下唇の裏をイタズラみたいに舐られて、舌を差し出したのに応えてもらえない俺は辱めを受ける。
「舌が欲しかった? わざわざ煙草消して相手してやったのにワガママだな。優しいピロートークが欲しかったか?」
「別に、条件反射」
「嘘吐けよ」
(わかってんなら、さっさと寄越せよ)
ムカついたから腕を引いて唇に思いきり噛み付いてやったら、男の下唇にわずかに血が滲んで酷薄な瞳で俺を見つめてきた。
(ざまぁみろ)
が――。
次の瞬間には荒々しく唇を食んできて、呼吸をする間も与えられないように咥内を犯され、鉄の味がする唇から伸びる舌は、俺の舌根を引きちぎるんじゃねぇかというほど、引きずり出され、巻き取られる。
「尻上げろ」
「あ?」
「難聴か? 尻上げろ」
俺はまだ動いていないのに身体を勝手に動かされ、尻を高く上げさせられると、先の交わりで白いものを滲ませながら綻んでいる、道筋をつけられた場所は熱情の証を難なく受け止める。
「一度抱いちまえば男も女も変わんないな。グッチャグチャ。腹に力入れろ。緩んでる」
女でもないが、緩んでるなんて言われたらさすがに腹が立つから胎内で締め付けるように腹筋に力を込めて搾り取ろうとしてやれば、背後から耳孔にそっと囁かれる。
「上手いじゃん。やれば出来る犬だな」
この体位が獣のそれであることは間違いないが、犬扱いされるのは面白くねぇ。
そんな反抗心も、男が腰を突き上げれば、背後からの深い交わりに内蔵が押し上げられて吐息が乱れ、全身を炙っていた炎が燃え盛る。
狂おしく吐き出される熱い吐息、狂おしく噴き出す熱い汗、狂おしく身体中を苛む深い劣情。
臍の奥で激しく暴れ狂う熱に耐えながら、俺は腹に付きそうな程に反り返った己の情欲を自ら手慰める。
男は突っ込むこと以外に興味がないようで、愛撫なんてものはろくになかったが、「気持ちいいか? 犬」と耳孔に囁かれるその言葉が何よりも俺を愛撫した。
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