24人が本棚に入れています
本棚に追加
2
私には、5年前から付き合っている彼がいる。
彼、糸井 蒼は高校の同級生で、蒼も私も地元の札幌の大学へ進学して、互いに実家暮らしでのんびりと付き合いを続けていた。
私はそのまま市内の病院に就職し、実家を出てアパートでひとり暮らしを始めた。蒼は実家暮らしを続けていたが、就職した翌年に帯広へ転勤となった。
それから遠距離恋愛となり、もうすぐ3カ月。
札幌、帯広間は特急列車で3時間弱。高速バスは4時間弱だ。
私の勤務はシフト制なので、土日休みの蒼とは休みが合わないこともあり、思うように会えなくてもどかしい時間が過ぎて行く。
遠距離になる前は、当たり前のように毎日顔を合わせ、肌を合わせ、満たされた時間を過ごしていた。
気持ちは変わらずそばにいるのに、手をのばした先に蒼はいない。寂しさばかりが募っていく。
この寂しさに慣れる日は来るのかな。
そんな話を友達にすれば「じゃあ、仕事辞めてついて行けばいいじゃん」と簡単に言われてしまった。「看護師の求人なんてどこにでもあるでしょ?」と。
事実、どこの病院も人員不足のことが多いため、選ばなければ働き口はどこにでもある。だが、私はまだ就職して2年目の半人前だ。最低でも3年間はこの急性期病棟で学びを深めたいと思っている。経験がある方が、再就職先の幅も広がる。
だから、私はまだここを辞めたくない。
最初のコメントを投稿しよう!