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 私には、5年前から付き合っている彼がいる。  彼、糸井 蒼(いとい あお)は高校の同級生で、蒼も私も地元の札幌の大学へ進学して、互いに実家暮らしでのんびりと付き合いを続けていた。  私はそのまま市内の病院に就職し、実家を出てアパートでひとり暮らしを始めた。蒼は実家暮らしを続けていたが、就職した翌年に帯広へ転勤となった。  それから遠距離恋愛となり、もうすぐ3カ月。  札幌、帯広間は特急列車で3時間弱。高速バスは4時間弱だ。  私の勤務はシフト制なので、土日休みの蒼とは休みが合わないこともあり、思うように会えなくてもどかしい時間が過ぎて行く。  遠距離になる前は、当たり前のように毎日顔を合わせ、肌を合わせ、満たされた時間を過ごしていた。  気持ちは変わらずそばにいるのに、手をのばした先に蒼はいない。寂しさばかりが募っていく。    この寂しさに慣れる日は来るのかな。    そんな話を友達にすれば「じゃあ、仕事辞めてついて行けばいいじゃん」と簡単に言われてしまった。「看護師の求人なんてどこにでもあるでしょ?」と。  事実、どこの病院も人員不足のことが多いため、選ばなければ働き口はどこにでもある。だが、私はまだ就職して2年目の半人前だ。最低でも3年間はこの急性期病棟で学びを深めたいと思っている。経験がある方が、再就職先の幅も広がる。  だから、私はまだここを辞めたくない。  
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