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「ゴメン、今のナシ……」  慌てて取り消そうとしても、放たれた言葉は消えることはない。    甘えがでた。  いつもの優しい声で『何言ってんだよ。俺には恵だけだよ』と、言って欲しかった。蒼なら言ってくれると思っていた。    『知らない』  そう言い捨てて、蒼は通話を切った。  どうしよう、怒らせちゃった。  見捨てられた?  焦燥感にかられ、言ってしまったことを後悔し、私は夜通し泣いた。  食べ物は喉を通らず、時々、吐き気にも襲われた。  "ごめん"のメッセージは既読スルーのまま、夜勤が続き、3日間、私のスマホは静かなままだ。  学生の頃、蒼と冗談半分に将来の計画を立てた。   「就職して3年は仕事を頑張ろう。そして26で同棲して、27で結婚。新婚生活を楽しみつつ共働きでお金を貯めて、28歳で一人目、30歳で二人目……32歳で復帰して、兼業ママになって……家族でアウトドアを楽しんだり、旅行に行ったりしたいよね!」と。  もちろん、必ずしもうまくいくなんて思っていなかった。  それでも、まさかこんなことになるなんて予想もしていなかったし、現実として受け止め切れない。  生理が1週間遅れている。イライラ、食欲不振、吐き気。  ストレスのせいだと思ったけれど、そうじゃない。  思い返せば思い当たる。  ドラッグストアと自宅で2度検査をした。どちらも秒で陽性のラインが浮かび上がった。    どうやら私は妊娠したらしい。    
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