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どうしよう? どうしたらいい?
あの口論の後、仲直りはした。だが、まだどことなくぎこちない。
そんなだから、私は妊娠したという事実を言い出せずにいた。
こんな大事な話を電話やメッセージアプリで伝えるのも違う気がした。というより、私自身まだ現実として受け入れられていないのだ。
そんな母体の意思を無視して、宿った命は育っていく。
胸が張る、尋常じゃないほどの強い眠気、ニオイに敏感になり、二日酔いみたいな胃のムカつきと突然の吐き気に襲われる。
妊娠初期の症状を自覚して「あぁ、ここにいるんだな」と少しだけ実感がわいてきた。
排卵、受精、着床という、看護学校で習った知識が脳内を占めた。
妊娠という奇跡についての座学。産科での実習。
私は学生の時、運よく赤ちゃん誕生の瞬間に立ち会わせてもらえることが出来た。生命誕生の瞬間に立ち会ったあの感動は、今でも思い返せば涙が滲む。
私と蒼の元に来てくれた命。
生んで育てたい。
でも……
蒼に伝えるのがコワイ。
もし、私と同じ気持ちじゃなかったら?
この間のことで私に愛想つかせていたら?
赤ちゃんは諦めて──って、言われたら?
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