親衛隊に憧れた骸骨

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親衛隊に憧れた骸骨

 これは魔王によって世界が統治されている魔物たちの国の話だ。  あるところにコタローという名の骸骨がいた。  コタローには夢があった。  魔王の親衛隊になるという夢だ。  以前、コタローの住む村に魔王が視察にやってきた。  その時の魔王の気品ある姿と、それを警護する親衛隊の立派な様子に深く感銘を受けたのだ。  魔王は黒い馬に乗って風格を漂わせ、付き従う親衛隊もそれはもう素晴らしいものであった。    ――自分も魔王様にお仕えできたらどんなに素敵だろう。  コタローはその光景に目を奪われ、自分もそんな存在になりたいと強く思った。  しかし、それにはひとつ大きな問題があった。  魔王の配下は「強い者であること」が条件だ。  視察に同行していた親衛隊も、一つ目の巨人やイノシシの顔をした筋肉ムキムキのオークなどいかにも強そうな者ばかりだった。  コタローは自分の骨だけの体を見て、溜息をつく。  こんな筋肉の無い骸骨では親衛隊になるどころか、魔王様のお城にお仕えすることもままならないだろう。  しかし、彼は夢を諦めなかった。  全財産を使って鍛冶屋に全身を覆う大きな鎧を作ってもらい、それを着て仕官を申し出たのだ。  強そうな見た目の鎧のおかげで、コタローの姿は大きな鎧のモンスターにしか見えない。  その立派な鎧が功を奏して、希望通り魔王の城で働けることになったのだ。  コタローは憧れの魔王の配下になれたことに最初は喜んだ。  しかし、いざ働き始めると今度は正体を知られてしまうのではないかと急に不安になってきた。
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