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偽りの鎧
しかし、そんな彼に転機が訪れた。
魔王が地方に視察に行くことになり、親衛隊見習いとしてコタローも同行させてもらえることになったのだ。
「親衛隊と一緒に魔王様のお供ができるなんてうれしいなぁ!」
数日後、コタローは荷物を運びながら、親衛隊と共に視察先の村に向かって歩いていた。
すぐ目の前には大きな黒い馬に乗って、銀髪を風になびかせる魔王の凛々しい姿がある。
――魔王様はなんて尊いのだろう。思い切って仕官してよかった。
たとえ、いつか正体を知られて城を追われることになったとしても、この出来事はきっと一生の思い出になるだろう、彼は密かにそう思った。
しばらくすると目的の村に到着した。
視察に訪れた魔王の姿を見て、集落の住民達は皆、恐れおののいている。
魔王は威風堂々とその光景を眺めた後、ゆっくり馬から降りた。
その時、急に背後から巨大な竜が現れて魔王に襲い掛かった。その竜は魔王を暗殺しようという刺客だったのだ。
「危ない!!!!」
親衛隊よりも早くそれを察知して竜の前に飛び出たのは、コタローだった。
巨大な竜の前足がコタローを薙ぎ払って、彼は大きく弾き飛ばされる。
だが、その一瞬が充分な時間稼ぎになった。
即座に親衛隊が動き、魔王自身も魔術を放ったので竜は無事に退治されたのだ。
「コタロー! 大丈夫か!」
強く地面に叩きつけられたコタローに隊長が駆け寄った。
「うぅっ……」
コタローはよろめきながらも、何とか立ち上がる。
だが、彼を包んでいた鎧は竜の攻撃に耐えられなかったらしく、大きく亀裂が入り、そこから真っ白な骸骨の姿が露わになってしまった。
「コタロー……お前は骸骨だったのか」
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