偽りの鎧

1/1
前へ
/4ページ
次へ

偽りの鎧

 しかし、そんな彼に転機が訪れた。  魔王が地方に視察に行くことになり、親衛隊見習いとしてコタローも同行させてもらえることになったのだ。 「親衛隊と一緒に魔王様のお供ができるなんてうれしいなぁ!」  数日後、コタローは荷物を運びながら、親衛隊と共に視察先の村に向かって歩いていた。  すぐ目の前には大きな黒い馬に乗って、銀髪を風になびかせる魔王の凛々しい姿がある。  ――魔王様はなんて尊いのだろう。思い切って仕官してよかった。  たとえ、いつか正体を知られて城を追われることになったとしても、この出来事はきっと一生の思い出になるだろう、彼は密かにそう思った。  しばらくすると目的の村に到着した。  視察に訪れた魔王の姿を見て、集落の住民達は皆、恐れおののいている。  魔王は威風堂々とその光景を眺めた後、ゆっくり馬から降りた。  その時、急に背後から巨大な竜が現れて魔王に襲い掛かった。その竜は魔王を暗殺しようという刺客だったのだ。 「危ない!!!!」  親衛隊よりも早くそれを察知して竜の前に飛び出たのは、コタローだった。  巨大な竜の前足がコタローを薙ぎ払って、彼は大きく弾き飛ばされる。  だが、その一瞬が充分な時間稼ぎになった。  即座に親衛隊が動き、魔王自身も魔術を放ったので竜は無事に退治されたのだ。 「コタロー! 大丈夫か!」  強く地面に叩きつけられたコタローに隊長が駆け寄った。 「うぅっ……」  コタローはよろめきながらも、何とか立ち上がる。  だが、彼を包んでいた鎧は竜の攻撃に耐えられなかったらしく、大きく亀裂が入り、そこから真っ白な骸骨の姿が露わになってしまった。 「コタロー……お前は骸骨だったのか」
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加