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強い者とは
ついに正体を知られた。これでもうここにはいられなくなる。
コタローは涙を流しながら、地面にひれ伏した。
「申し訳ありません、僕は皆を騙していました! 鎧で大きく見せていただけで、実はただの骸骨で……僕の強さは偽物なんです!」
周囲が静まる中、魔王がゆっくりと口を開いた。
「……コタローよ。顔を上げよ」
地面に額を擦りつけるほど頭を下げていたコタローに、魔王が厳かな声で語りかけた。
「お前は、強い者とはどんな存在だと思っているのだ?」
魔王の問いにコタローは震えながらも顔を上げ、答える。
「……親衛隊の皆さんみたいに、大きくて筋肉質の人だと思います」
しかし、魔王はそれに反論した。
「否。強さとは、肉体の強靱さやたくましさだけではない。心の強さも含まれる」
「心の強さ……!」
「お前はたしかに見た目は筋肉を持たない骸骨だ。しかし、竜に立ち向かったその行動はまさしく心の強さがもたらしたものである」
その言葉に親衛隊の皆も大きな声で賛成した。
「魔王さまの仰る通りだ!」
「大切なのは心のマッスルだな!」
「コタローは強いぞ!」
温かい言葉に胸が熱くなったコタローに、隊長が微笑んだ。
「コタロー。これからもよろしく頼むぞ」
「魔王様……隊長……皆さん。ありがとうございます!」
こうして、筋骨隆々の魔王の親衛隊の中にヒョロヒョロの骸骨が一人加わることになった。
彼は誰よりも心がマッチョな骸骨として、今日も張り切って仕事をしている。
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