大人になれたと気づけた日

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 東京の大学を卒業して旅行会社で企画をするんだ、と意気込んで私は四年前にこの町を出た。  東京では、人の流れが止まらず、朝の電車でのラッシュに押しつぶされそうになり、私という存在も飲み込まれそうだった。  それでも大勢の人達の中からほんの少しの友達もできて、うまくやっていけたのかはわからないけれど、大学生活を満喫することはできた。  でも、大学を卒業をするところはできても、私は旅行会社どころか、内定一つ得ることができずじまいだった。  学生でなくなれば仕送りも終わることになり、無職で生きていくには家賃が高すぎて、やむをえず私は地元に帰ることにした。  大学二年から帰っていなかったので、もう約三年も地元には帰っていなかった。特別避けていたわけではなくて、バイトや学校が忙しかったというぐらいだった。 *  新幹線を降りてから市鉄に乗り換え、最寄り駅である三郷駅で降りたとき、私以外に降りる人はいなくて、相変わらず錆びれた町なんだなといろんな記憶が甦った。  三月の終わりだというのにホームの端っこには雪が残っていた。  決して白い雪ではなく、埃なのか塵なのか、黒ずんだ雪で、見るからに固そうだった。あれがすべて消えれば春なんだよねって思いながら私はスーツケースを転がしながら私は駅を出た。  駅の前で小学生ぐらいの子どもが固まった雪を蹴飛ばしながら歩いているのを見たら、いまの子もやるんだなーとちょっと笑みが漏れてしまった。
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